研修医諸君へ(5)気になる患者はカルテ番号をメモしよう
救急外来、外来等で患者を診察し、初期対応した後でも気になる患者は少なくないはずである。今年から始まった救急患者カンファレンスは実に良い取り組みで、そこで取りあげられた場合、ある一定の見解は提示される。しかし、あくまでもその時点での判断でしかない。
患者の病態を判断する際にある時点の情報からだけで判断するには困難がある。その際に一番重要なのは病状の時間的推移による変化である。
研修医が診たあとの大部分の患者は、相当する外来を受診させることになる。指導医の一部は親切にその後の経過を知らしてくれる。それが本来の姿であると言っても、それを研修医の方から期待してはいけない。院内のコミュニケーション、特に医師同士の意志疎通ははたで言われているほど良いわけではない。だから、気になる患者は自分でカルテ番号をひかえておき、時々カルテを出してみるのが一番であり、入院の際には病棟にカルテを見に行くべきである。
研修医に多くの示唆を与え、疑問を投げかけ、勉強の機会を与えてくれるのは指導医でもなく患者であるという視点は決して忘れてはならない。
気になる患者のカルテ番号はメモするという習慣は、私は今でもやっている。外来に院内から紹介されて患者が回ってきた場合、それが外来通院患者の場合にはその場で返事を書くが、カルテ番号はパソコンに入力しておく。入院患者であれば自室に戻ってから患者の主要な情報をパソコンに入力し、返事を書く。
その理由は病状に関してや治療に関して返事・コメントを書いてもその後どうなったのか、その顛末、経過の変化を主治医から報告されることは殆ど無いからである。少なくともいい経過を辿った場合には連絡はない。悪しき経過の時は、またカルテが回ってくるから解る。これは本来あるべき姿ではない。しかしそんなこと言っていてもしようがない。私はそれに対する自己防御として患者情報をパソコンに入力しておき、一定の期間の後にカルテを取り出して検討したり、病棟を訪れたりして再検討している。
研修医と経験と立場は違っていても、患者から学び取ること、患者に為したことの顛末を確認することが責任上でも重要であることに差など無い。
この2年間、患者から多くのものを学んで欲しい。そのための私からのアドバイスである。
次は、「気になる患者は指導医に実際に診てもらおう」