AKT TV Dr i の診察室 (2002/4/17放送)



小泉さん、これじゃ一得二方損!
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画像提供:全国保険医団体連合会


今日は、政府が進めている医療制度改革のことを中心に、医療費の話をしたいと思います.  小泉首相は行政改革に「米百俵」を初めとしたキャッチフレーズをつけて提起しています。確かにキャッチフレーズをつけると全体のイメージが解りやすくなりますから、良い印象を与えます。  医療法の改革のキャッチフレーズは「三方一両損」でした。



「三方一両損」て、どんな話でしょうか.

「三方一両損」は江戸時代の作り話で、三両なくした人,拾った人が互いに意地を張って受け取らず、仲裁に入った大岡越前の守が自分も1両を出して,2両ずつ分けたという話です.要するに3人とも1両ずつ損をしたということです。私は個人的にはこんな解決法は好きではありませんが。




これを医療改革に見立てて、国民、医療機関、国が、各々負担をして危機を乗り切ろうと言うものでした.  私たちは医師として日本の医療を守るために言いたいことはいっぱいあるのですが、時代がらある程度は止むを得ないと、それなりに納得していたのですが、明らかになってきた改革案は「三方一両損」といえるものでは無く,「一得二方損」と言うべきものでした.


具体的にはどんなふうに変わるのでしょうか

細かいお話は出来ませんが、大体、次のようになる予定です。
今年の4/1から 老人窓口負担     
・ 引き上げ 4/1以降入院した方が6ヶ月以上入院すれば15%自己負担  6・10万円もの負担に
診療報酬は2.7%値下げ            

(実際は5-30%ほど収入が減る所もあって,4月以降,医師はみんな青くなっています!!) 

今年10月から(予定)
70歳以上の窓口負担・・・・・1割に(病気によってはいまの2-6倍に) (所得によっては2割に)
2003/4(予定) 健康保険料 
・ 引き上げ サラリーマン窓口負担・・・・・3割に(1割増でなく1.5倍に)
  3歳未満・・・・・・2割に

要するに国民の負担を増額し、医療機関の収益を減らすというもので、国は全く損をしないのです。これを私は一得二方損と言っています。


それだけ、国が困っていると言うことでしょうか?

いいえ、小泉さんや政府は、医療費が国の財政を圧迫していると言っていますが,国民総生産の中に占める医療費の割合を外国と比べてみますと,先進国の中で18番目です.それでいながら平均寿命や健康寿命が世界一な訳ですから、少ない医療費で最大の効果を上げていることになります。  だから医療関係者の労働環境は大変なのです。  一方,日本の政治家は経済面ではすごく楽をして国を治めていることになります。
 

私は,いつかはもう少し余裕を持って診療出来る日が来るだろうと期待していたのですが,はかない夢に終わりそうです


今後どうすればいいのでしょう。

医師会は医療を預かる医師の団体という責任がありますから,医療環境を悪くしないために積極的に政府に働きかけをしていきます。
 国民のみなさん方は政府の言うなりになるのではなく,将来どういう医療を受けたいのかを自分で考え,選挙とかを通じて意思表示することだと思います。


高額納税者には医師が沢山入っていますよね。

 確かに、高額納税者の中に多くの医療関係者が入っていますが、儲けすぎているなどと考えてはいけません。一人の患者さんを診察した際の収入はほぼ決まっていてそれほど多いものではありません.従って、収入が多いと言うことはそれだけ多くの患者さん方を診療し、地域住民の健康を守っているということになります。
 更に、税金を沢山納めて、その面でも貢献しているわけで、私からみればすごい方々だと思いますが、羨ましいなんては一切思いません。医師の健康や生活のことを考えれば,むしろお気の毒に思えます。何とか楽にしてあげたいくらいです.


追記(2002年5月1日)
先進国と言われる各国では医療費や福祉の費用を捻出するためにかなりの努力を強いられています.日本の政治家は,この点で楽なはずですし,目立った民族紛争もなく,隣国との小競り合いもなく,楽に国を治めていることになります。だから,国会で金銭がらみのくだらない論争を繰り広げている余裕があるのでしょう.

 今後のことですが,私は患者さんの健康を預かっているという責任と自覚がありますから,医療環境を良くするために医師会を通じて積極的に政府に働きかけをしていきます。みなさん方は,政府の言うなりにならず,将来どういう医療を受けたいのかを自分で考え,発言し,選挙とかを通じてしっかりと意思表示して欲しいと思います



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