在宅終末期介護について

秋田組合総合病院 消化器科 福田二代



  
病院で死ぬことが当たり前になってから大分たちました。昔は死ぬ間際になってやっと病院に連れてきてもらえたものです。病院で最期を迎えさせて,「親孝行した」と子供たちも満足したものです。しかし,日本人は自分の最期を自分で決められなくなり,人任せになりました。病院で穴という穴に管を入れられ,言いたいことも言えず,食べれず,呑めず,吸えず,悲惨な最期を迎えます。一秒でも長く生きて欲しいという家族の願いを叶えるため,医療者も頑張ります。しかしご本人はどう思っているのでしょう。自分の死を悟ったとき,どんな最期を過ごすかを,普段から考えておく必要があります。医師から病名,病状を正確に伝えてもらい,自分のことは自分で決めましょう。医療のことは何も解らないという方が多いのですが,元気なうちに雑誌や新聞の記事などで勉強しておいて下さい。人間らしい最期を迎えるためにとても重要なことです。私は医師として,病気のことを説明してあげることが大事と考え,心掛けてきました。私の外来が時間がかかるのはそのためだと思います。
 
 「最期をどこで過ごしたいか」というアンケートでは「自宅で」という答えが多く見られます。でも出来るはずがないと思っている方が多いでしょう。しかし時代は変わってきました。小泉内閣は医療を改革する,と言いながら医療費を削減しています。
病院では患者さんを長期間は入院させてあげられなくなったので,末期がんの方でも具合のいい方は退院を勧めます。一方,自宅で療養できるように色々な援助も用意されています。福島県ではがんで亡くなる人の半分は自宅です。往診体制や訪問看護,ヘルパーなどの整備があればがんの在宅介護も可能なのです。家族の負担が大きいのは明らかですが,最期を自宅で過ごしたいという本人の希望を叶えてあげたいという気持ちが解決の糸口です。

がんと言えば激しい疼痛が伴うものと恐れられて来ましたが,がんの疼痛は今は在宅でもうまく治療出来るようになりました。麻薬などの鎮痛剤は内服,座薬,貼り薬,皮下注射,静脈注射の形で用いることが出来ます。苦痛の程度に合わせて自分で薬を調節することも可能です。私は何人かの方を自宅で見取らせていただきました。一番最近の方は84歳の女性でした。「胃にしこりがありますが手術は出来ません」とお伝えしたところ「それでは自宅で養生します」と言われました。長男夫婦,孫夫婦とひ孫の大家族で,嫁にいった孫が看護師と恵まれていたと言うこともありましたが,週に2〜3回訪問看護ステーションの看護師の介護を受け,1ヵ月半在宅で安楽に過ごされました。最期の10日間ほどは麻薬や鎮静剤を座薬として使いました。在宅医療ではホームヘルパーの参加も重要です。病院などにある医事相談室も多いに利用して,患者さん本人が望む医療を受けて欲しいものです。