悲惨な飲み過ぎの害
私たちが幼いころ子供の給食代まで飲み代にしてしまうような大酒飲みが近所には何人かいて、家族は悲惨な生活を送っていたものです.
子供心に『妻子の苦労も省みもせず、男ってなんて身勝手なんだ』と憤りを感じたり仕事や人生の労苦を酒で紛らわせなければならないことに同情したものです。
胃腸科の外来にはアルコールの取り過ぎで、肝臓病や膵炎、糖尿病に侵されている中高年の男性患者が、今も大勢通院しています。うまく禁酒や摂取できた人もいますが、酒におぼれて入退院を繰り返したり、命を落としたりする人も少なくありません。
このような人々を重篤問題飲酒者と呼びますが、退院して何週間もしないうちに、血を吐いたり、腹水が溜まったり、意識を失ったりして救急車で運び込まれて、夜を徹して治療にあたることも少なくありません。
しかも何度も繰り返すので主治医として腹が立つやら情けないやらで内科医としての限界を感じながら治療にあたっています。また妻子に見捨てられてり、連れ合いができなかったりして一人暮らしの人が多く、死亡してから何日もしてから発見されることも
あります。精神科医の助けも借りて何人かの人はうまく離脱できましたが、酒を断たせるのはなかなか難しく、アルコール依存症の底知れない恐ろしさに圧倒されています。
秋田県は一人当たりの清酒の消費量が日本一だといわれていますが、私には名誉なことだとは思っていません。多くの人は酒を楽しんでいるのだと思いますが、誰でもなり得るアルコール依存症の悲惨さを肝に銘じながら飲んでもらいたいと思います。
アルコールの健康的な飲み方を紹介します。
@連日飲まない(少なくても週休二日)
A一日二合(360ml)以上は飲まない
Bゆっくり飲む
C濃い酒は薄めて飲む
Dつまみと一緒に楽しむ
などです。
また早期予防が大切で、小学生のうちから飲みすぎの害を教えることが必要といわれています。
人間は心に何かを被せなければ生きていけないのですが、アルコール以外の何かにも心を託したいものです。
1996 8 15(福田二代・秋田組合総合病院消化器科長)