高齢化社会を迎えるにあたって
高齢化社会を迎えるにあたって、医療保険制度の抜本的改革は必要です。
今回のは改革案でなく、単なる患者負担増案でしかありません。提示された負担増はとてつもなく大きく、受診抑制効果と相まって、一時的には大きな効果が出るでしょうが、何れまた悪化していきます。医療費が増えていく構造的欠陥に一切手をつけずに、声の小さな弱者の負担増で乗り切ろうとしているからです。
一方、医療者側にも発想の転換が求められます。かつては医師が医療の経済性や患者へのサービスについて論じることは恥ずかしいこと、と言われていたこともありますが、有限の経済資源の中で医療をやっていく考え方が必要です。受診してきた患者を診察して事足れりとせず、予防医学的な活動を重視しなければなりません。また、より適正な受診、医療の受け方などについて指導する必要があります。これらは医療人としての自主性を維持するためで、われわれがやらなければそのうち官による規制が始まります。
今回の答申案には高齢者自己負担の定率性が盛り込まれていましたが、これは容認できるものではありません。これを定額制にかえ得たことは医師会も含む各方面からの運動の成果です。医師会では薬剤費用も自己負担分に包めるべきと主張しています。治療はあくまで患者さんの心身の具合に対し必要だから行うのであって、懐具合で決めるものではありません。高齢者は心身に問題を沢山抱えており、重症者、経済弱者に負担が増えます。ある試案によると月に4-7千円も負担しなければならない患者が増えるといいます。
健康保険料の負担に加え、今回示された大幅な自己負担増は受診抑制につながり、結果的に重症者が増えることにつながります。医療機関の窓口業務も煩雑になり、経営にも影響が及ぶだろうと思います。
予め用意された結論を、委員会でつじつまあわせをして答申するやり方は止め、医療のあるべき姿、各人の負担のあり方を何通りか提示し、国民に選択してもらうプロセスをとるべきです。
今回の改悪には憤りを感じています。