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(1)医師数不足だけでない、医師マインドの崩壊なのだ
今、日本では医師不足から地域医療供給体制が大きく乱れ、医療崩壊が大きな話題、社会問題になっている。わが国の医師は絶対的に不足している。それでも毎年8000人近くが医師免許を取得し、徐々に増加している。
しかし、ここ2-3年の間にこれほど急速に医療供給体制が悪化したと言うことは、この間に医療界に大きな変化が生じたためである。その因子として挙げられているのは、徐々に医療業務が複雑、煩雑になりマンパワーの需要が増えたことによる絶対的・相対的医師不足、更に新臨床研修制度が医師の偏在に拍車をかけ、大学の医師供給体制が崩壊したため、とされている。これらの因子が主因であることは明らかである。
しかし、私はそれ以上の重要な因子として、従来から医療界で常識としてまかり通ってきたことが社会的に非常識と次々と指摘され、問題を突きつけられてきたこと、を挙げる必要があると思う。そのこと自体は決して悪いことではなく、進めるべき所もある。
問題は、それと共に医師としての満足感、達成感すらも剥奪されるようなご時世になってきたこと、が医療崩壊の隠れた、かつ無視できない大きなルーツになっていると思う。さらに、この新しい時代感覚を身につけた世代の医師が増加してきたことも関連している。彼らは「裸の王様」を見て「裸だ!!」と指摘できる資質も備えているから、医療界の古き良き時代の考え方等には一切見向きもしない。だから、大学はもっと改革しなければ若い医師は集まらない。
この医療崩壊の主因は医師の絶対的不足にある事は明らかである。だから、崩壊を解決するには、医師数を増やし、医師の労務環境を社会人としての標準的な基準に近くまで持って行く必要がある。とりあえず医師数をOECD加盟国平均にする事を目標に置くとすれば、現状で医師数は12万人不足であり、いまの養成数のままなら40数年かかることになる。20年も経てばさらに目標数は増えているだろうからいたちごっこである。
医師数だけで論じてもこれほど大変なことであるが、これに医師マインドの復活をも併せて期待するなら、医療崩壊の進展を防ぐことは極めて困難な状況にあることが分かる。
(2)WHOの「日本の医療は最高」との評価も崩壊の遠因なのだ
日本の医療制度は国際的に評価が高い。
旅行者や外国在住者が個別に語る諸外国の受療時の煩わしさ、に関する経験談に事欠かない。それらを読み聴きする度に、国民皆保険制度、医師マインドを背景に成り立っている我が国の医療供給体制のすばらしさを感じている。
医療評価の客観的指標としてWHOの国際的医療評価結果が参考になる。
WHOは日本の医療制度を総合評価で第1位に、医療の平等性では第3位に、医療費/GDPは18位と評価した。要するに安い費用で著しい成果を挙げている、ことが評価されている。一方、小泉元首相が目標に掲げていた米国の医療は、WHOは総合評価で第15位、平等性では第32位に、医療費/GDPは1位と評価している。米国は医療費をかけている割りに総合評価は低く、私共の目から見れば医療費をドブに垂れ流しているようなものである。小泉さんは金をかけないで米国化を目論んでいたから、もう狂人というべきである。
私は、WHOはわが国の医療を評価する際に大きな誤りをおかしたと考えているし、医療崩壊を進めた遠因になっていると思う。医療関係者もこの評価を誇りに思い、自分たちが如何に効率的に仕事をしているか、と言う自己満足に漬っていた。
WHOは評価項目の中に医療関係者の「業務時間」および「自己犠牲度」も入れるべきだったのだ。そうすれば日本の医療の評価は一気に下がるし、その方が良かったと思う。
我が国の病院の医師・看護師は一人あたり米国の5倍の入院患者を受け持ち、外来では8倍の患者を診察している。とにかく忙しく余裕がない。常に医療事故を起こしそうで心配な状況にある。病院は常に自転車操業である。にもかかわらず日本の病院の72.8%は収支で赤字を計上している(2006年病院運営実態調査)。こんなバカなことがまかり通っているのが日本の医療の実情なのだ。
医療機関では法定以上に職員を増員し、配置したくとも経済的余裕が無く、出来ない。そればかりか、欠員があっても医師も看護師もおらず補充できない。運良く面接まで持ち込んでも業務状態や給与を提示した途端に逃げられる。
日本の患者は恵まれていると思う。なにしろ「患者様」と呼ぶ医療関係者もいるほどだからね。それなのに患者の不満は世界一である。
日本の医療は医療関係者の犠牲の上に成り立っていることを分かって欲しいものだ、と健康講話などで私はずっと強調してきたが、もうそのような努力をする必要もなくなった。
わが国の医療崩壊はまだまだ止まるところを知らぬほど進むから、崩壊ならぬ医療砂漠のなかで国民はかつての医療を懐かしみ涙を流すだろう。行く末を分かっていても医療現場ではもう為す術を持たない。その責任と解決のための鍵は政府・厚労省が握っている。
(3)医療崩壊は厚労省のシナリオ通りに進んでいる
わが国の医療崩壊の責任と解決の鍵は政府・厚労省が握っている。医療現場でやれることは最早姑息的な対応だけである。
私は今の医療崩壊は厚労省が仕組んだシナリオ通りに進行しているものだと考えている。勿論、厚労省がわが国の医療を崩壊させようとした、と言うつもりはない。
厚労省はわが国の医療の需要は高齢化、患者数増加、医療レベルなどを勘案して国民医療費は将来大きく高まると言う予測を行い、マスコミを使って警告を発する一方で、医師の需要はまもなく飽和状態になる、と言う矛盾した論理を展開して医師の養成数の抑制を始めた。
この二つの関係だけから近い将来、医師の労働量が過剰となり、医師は耐えられなくなり、いずれ医療は崩壊していくであろう、と予測することが出来る。
国民医療費の実績額と予想額、業務に従事している医師数・予想数の関係を見てみると、平成11年が30.9兆円(医師数25万人)、12年が38兆円(25.5万人)、22年が68兆円(推定28万人?)、37年が141兆円(33万人?)というものである。国民医療費は明らかに過剰な推計であるが、これだけ将来の医療費が増えると言う危機感を発信しながら、一方では医師は過剰になると断じているところに大きな矛盾がある。
上記の二つの推計から、医師一人が担当するべき労働量を医療費に換算して見ると、平成11年が1.24億円、12年が1.49億円、22年が2.15億円、37年が4.3億円と一人の医師が受け持つ医療費は年ごとに増えていく。通常の医師一人あたりの労働量は医療費に換算するとせいぜい1億円程度と考えられるから、医師一人あたりの労働量が年々増えていく事を示している。しかも、ただ事でない、著しい増え方である。平成37年頃の医師は平成11年の医師の3倍以上働くことが期待されている事になる。これではやっていけるはずがない。
いまの医療崩壊は絶対的医師不足を背景に厚労省が仕組んだシナリオに沿って進んでいる。更に新臨床研修制度、その他の要因が介在してが思いがけないほどの医師偏在、医師労働力の低下が生じたことで一気に進行し、問題が顕在化したのだ。
(4)女医の増加も一因だが、諸悪は医師業務の異常性にあり
最近、女性医師問題がクローズアップされている。医療施設従事医師中の女性比率が年々増えて来ており、平成18年の時点で全国では16.3%、秋田県では13.3%を占めている。これが、国家試験合格者で見ると全国で33.4%(平成19年)を占めるほどになっている。
女性医師の進出は、男性医師とは異次元の、生活、結婚、出産、子育てという経験者であること、あるいは将来それらを経験するという特質を備えていることから見ても重要である。そんは理屈を挙げず、患者の半数は女性であることを勘案しただけでも大歓迎である。現に各方面で女性医師は大活躍し国民の健康を支えている。今後更に増えて行くであろう。
女性医師問題は最近急速にクローズアップされているが、その一部には女性蔑視的な、根拠のない印象を根拠に医師としての資質を危惧する考えもなくはない。確かに、過去には主治医が女性であることに不安を訴えた患者も少なくなかったが、もうそんなことを言われる時代ではない。医師としての業務処理能力そのものには全く遜色ないどころか驚くような働きをしている方々も少なくない。
ところが、女性医師は結婚すると家庭・育児と業務の両立が困難と言うことで早期に離職したり、パート医師として働くケースが少なくなく、このことが医師不足を加速、回りまわって男性医師の業務にも影響を与えている。だから、女性医師問題が取りざたされてくることになる。
日本でも遅ればせながら、かつては男性中心であった各種の職業や業務に女性がどんどんと進出している。このことは社会からも熱望されていることであり、歓迎されているし、政策的にも後押しされている。しかも、女性の進出が問題として取り上げられたり、ネガティブに取りざたされているのを私は一切知らない。私が知る範囲においては唯一、女性医師問題だけである。
何故、女性医師問題が生じているのか?それは医師の業務環境自体が劣悪であると言うことの反映であり、個々の女性医師の問題ではない。
医師の業務環境全体が常識的レベルにまで改善されれば、女性医師問題は自然と消滅していく。女性医師をここまで追い込んでいるのは、実は急速に増えてくる女性医師を迎える労務環境を整えて来なかった厚労省の責任である。それに、医療現場の男性医師も厳しい業務環境の改善を声高に叫ばなかったからでもある。だから女性医師問題が浮上しているのだ。このことも医療崩壊の一因である。
(5)子育て中の女性医師はなぜ離職するのか
最近、女性医師が増えてきている。医師の道に進もうとしている女性達の意気込みは実習に来た医学生と懇談しても特別性差を感じることはない。むしろ男性以上の意気込みを感じる事の方が多い。
医学生に対して行った「女性医師に対するアンケート調査」では、医師が働きやすい職場にするにはどうすればいいと思う?と言う問いに、
■医師の仕事は過酷のままでいい
■ある程度厳しいのは仕方がないこと・・・と答えている。医師の仕事の過酷さを知っていて、覚悟の上で医療の道に進んでいる意気込みが感じられる。
昨年に秋田県が診療に携わっている県内の女性医師に対して行ったアンケート調査では、医師という職業を選んだ理由として、
■自立できる職業だから
■生き甲斐があるから
■学問的に興味があったから、が上位を占めていた。とても前向きである。
ところが、実際に結婚し妊娠・出産を迎える時期になると、直ぐに数々の障害に遭遇し、やむなく方向転換が余儀なくされるようである。
昨年、秋田市で開かれた第2回女性医師フォーラムで講演された山崎麻美医師は大阪医療センターの小児脳神経外科医で、著書に「小児の脳を守る」があり、女性医師の就労関連の改善運動でも知られている方である。
山崎氏は講演の中で、「女性医師が離職する理由」として、
■3才迄は母親が、と言う「3才児神話の浸透」
■良い育児をしなければ、と言う「良い育児症候群」
■私でなければと言う「オンリーワン神話」、を挙げていた。
また、「働きたくとも働けない現実の環境」として、
■妊娠・出産のための制度が欠如している
■子供を預ける所がない
■休めないことはないが、周囲にかえって迷惑になるから
■子供が出来たら医師としての就労は到底無理との決めつけ、
を挙げていた。女性医師は子育てという現実を迎えて、厳しい就労環境といだいていた高い理想の狭間で呻吟する様子が窺われる。
英、仏、独の勤務医の一週間あたりの勤務時間は医師の年齢にかかわらず40-50時間であるのに対し、わが国の医師は60-80時間であり、一般的に若い医師ほど勤務時間は長い。子育ての最中にあると思われる40歳以下の勤務医の勤務時間は70時間を超えている。これほどの時間職場に拘束された状態であれば、子育ては最初から困難、不可能である。
医学生がアンケートの中で答えた、「医師の仕事は過酷のままでいい」、とか、「ある程度厳しいのは仕方がない」、と言うのは社会一般の考え方であろうし、医師の多くもその様に納得して来ていたのであろうが、これを当たり前の姿と容認してしまうと改善はあり得ない。
医師の過酷な業務を容認し、声高に改善を求めず放置してきたことが、いまの勤務医の疲弊問題であり、女性医師問題であり、病院からの医師離れであり、地域医療崩壊のルーツである。
だから、まず、わが国の、特に若手勤務医の負荷になっている劣悪な勤務条件の改善こそが医療崩壊にまつわる問題解決の基本である。
(6)医療崩壊はくい止める事が出来るのか
秋田県内の医療4団体、県医師会、県歯科医師会、県薬剤師会、県看護協会は年に一回懇談会を開催している。各会共に事情は異なるものの「崩壊」に直面していると言うことであったので、今年はこれをテーマに各会の現状を提示していただき、意見交換した。
県医師会からは私が「医療崩壊はくい止められるのか」として最初に話題を提供した。内容は常々記載していることを取りまとめた内容である。
医療崩壊に至った原因として
(1)国の低医療費政策と医師養成削減が絶対的医師不足を招いた
日本では著しい医師不足状態にあり、現状のOECD並にするのに12万人不足で、現状の養成数では40年かかっても追い付けない。秋田県の医師は昨年の病院への調査で多くの診療科にわたり約300人不足している。
(2)医師の絶対的不足に更に偏在による相対的不足の因子が加わった。偏在は単なる医師数だけでなく業務内容、業務形態など種々の因子によっても生じている。
■医師の業務の変化----病院では在院日数短縮を背景に仕事量が増大し、書類処理、院内の委員会への出席など、医療外の雑務が増えた。
■医師の業務形態上の偏在----開業医指向、フリーター医師の増加、勤務医の減少、病院勤務医の過重労働・医療労働環境劣化など。
■
新臨床研修制度-----医学界の封建的慣習が崩壊し、大学の医師派遣機能の低下は医師偏在の大きな因子となり、秋田県内の医師不足の原因となり、秋田県内の地域医療の崩壊の一因となった。
■
医師の診療科の偏在----小児科、産婦人科だけでなく全科。特に外科系医師の減少傾向は厳しい。
■
医師の業務上の偏在-----専門医指向。
■医師の構成(女性医師の増加)の偏在------出産育児などによる離職。
■医師の満足感・達成感の欠如など---若者気質の変化、医師・患者関係の変化、患者対応の複雑化。医療観、倫理観、責任感の喪失。医療はサービス業、患者様、不公正医療報道、医事紛争の増加、医療裁判判断の低さ、WHOの誤った評価など。
(3)
医療崩壊の解決への道
以下の項目を挙げたが、結論として現状の国の低医療費政策が続き、県の医療費適正化計画が実施される限り、医療崩壊はまだまだ進行するであろう、と述べた。
■医学部の定員増---医学部の定員を増やせば解決すると言う問題ではない状況に至ってしまった。されど、医師絶対数を増やさずには解決は無い。
■外国人医師の輸入も一方法。
■医師の気質の変化、喪失しつつある医師マインドはもう二度と戻らないだろう。
■8時から18時頃程度で終了できる業務環境の確立が必須である。
■
新臨床研修制度の見直し。
■管理者要件等で地域医療参加キャリアの評価。
■紹介状の病診連携から参加型医療連携。
■患者教育や指導による受診行動の適正化。
(7) 歯科の医療崩壊 歯科は養成過剰で崩壊、医師は養成不足で崩壊
秋田県内の医療4団体、県医師会、県歯科医師会、県薬剤師会、県看護協会は年に一回懇談会を開催している。今年は各会の「崩壊」の現状について意見交換した。
歯科医師は過剰状態にあることは歯科診療所の林立状態からも推定できるが、今回歯科医師会からの情報提供によって医療界とは逆の「歯科医師養成過剰による崩壊の危機」に面している事が理解できた。
歯学部・歯科大学は昭和40年以降、それまで7校であったが13校になり、昭和50年代後半までに29校に増えた。わずか10数年の間に4倍に増えたことになる。昭和61年に入学者数の20%削減がなされたが、歯科医師はなおも増え続けているとのことであった。
日本の歯科医師数は、昭和57年は58,362人で49.2人/人口10万人であったものが、平成18年には97,198人、76.1人/10万人である。その増加率は絶対数で1.67倍、人口比では1.65倍である。
秋田県の歯科医師数を見ると、昭和57年は386人で30.6人/人口10万人であったものが、平成18年には650人、57.3人/10万人である。増加率は絶対数で1.68倍、人口比で1.87倍である。このデータから歯科医師は全国に比し歯科医師数の増加は全国並みであるが、人口あたりで見ると増加率が大きい。だから、県内の歯科医師は急増しており、県内の歯科医師の迎えている状況は厳しいだろうと推定できる。
日本の医師数を上記と同じ年度で見てみると、昭和57年が167,952人、141.5人/10万人、平成18年は277,927人、217人/10万人である。だから、同期間における増加率は絶対数で1.55倍、人口10万人あたりでは1.53倍である。
歯科医師過剰と言うことであるが、この2点間で医師と歯科医師の絶対数の比較をしてみると、医師数は1.55倍、歯科医師数は1.67倍と若干歯科医の増加が多いが、殆ど一緒である事に気付く。ところが医療界では「医師不足による医療崩壊」が著しく、歯科医界では「歯科医過剰による崩壊」が顕著になっている。
これはどうしたことか、両界にはいろいろな条件の差があるので単純な比較は出来ないが、医療界も歯科医界から学ぶべき事は少なくない。
医療界では「医師不足による医療崩壊」が、歯科医界では「歯科医過剰による崩壊」と言うが、昭和59年と平成18年の
2点間で比較をしてみると、双方の医師数の増加程度は殆ど一緒である。
何故、この様な違いが生じるのだろうか。両界にはいろいろな条件の差があるので単純な比較は出来ないが、医療界も歯科医界から学ぶべき事は少なくない。
医師の場合、絶対的不足に更に偏在が加わった。更に医療政策上の業務の締め付け、医師側の業務内容、業務形態も変化した。その上に、高齢化、疾病構造の変化、患者医師関係の変化などの因子も関連して医師不足が一層顕著になっている。
私は歯科医療界のことはよく分からないが、歯科医の場合にも医療情勢・状況は基本的には同じだろうと考えられる。
異なると思われるのは、
■
歯科医療の対象領域はより狭い。医療分野の2-3の診療科に相当する範囲ではなかろうか。とすれば、医師の1/3ほどの歯科医師数は過剰と言うことになる。
■
業務形態として多くは診療所を開設している。病院歯科医師は極めて少ない。
■
過剰のために歯科医師の偏在は解消されかかっているどころか、地域によっては明らかに過剰となっている。
■
平成18年の歯科医師は76.1人/10万人であるが、50人が妥当とされている。このままの供給状況では平成37年(2025年)には2万4千人の過剰となる。
■
子供、若者の齲歯の有病率は低下している。一方、高齢者の口腔疾患、歯科医療の重要性は充分認識されていない。
■
景気や経済状況の影響を受けやすい分野である。
■ 医療との連携や在宅医療の分野が遅れている。
■
混合診療が可能である
■・・・・まだまだあるだろう、
結果として、厳しい医療費削減政策のもとで歯科医院経営は悪化し、崩壊寸前となってきている。良質な歯科医療の提供には経営の安定化が必要不可欠であるが、将来的にもなかなか展望を持ちがたい。健康を守るという義務感と歯科医師としてのプライドが歯科医療を支えている状況、とのことであった。
現に、歯科医師の自殺は増加傾向にあり、日本歯科医師会会員の平成18年度の自殺者数は33人で、ここ数年で倍増している。経済的問題・健康問題のほかに、診療報酬の過酷な指導・監査をめぐる苦悩が原因と考えられていると言う。
今後、医療費削減のため補綴治療の給付制限・給付割合の低下が予想され、歯科診療所の運営はより困難になり、一層混合診療化に向かっていくと考えられる。このことは国民にとって必ずしも良いこととは言えない。
歯科医師過剰による弊害が具体的に生じているが、それを承知で国・厚労省は引き続き歯科医師の養成を続けていくらしい。医療費削減のため治療の給付制限をしてくる一方で、歯科医養成に国民の税金を投入し続けるのは無駄遣いであろう。
歯科医師を元気にするために、絶対的医師不足を解消するために、養成の費用を医師養成の方に回して貰えないものだろうか。医師不足は深刻である。国力のかなりと投入して医師の養成を大幅に増やしても数十年は決して医師過剰とはならない。厚労省の試算、委員会の試算は誤っている。
(8)薬剤師も供給過剰から機能的崩壊に向かっている
医師は絶対的不足、歯科医は養成過剰で崩壊状態にある事が分かったが、秋田県薬剤師会の情報提供で薬剤師も供給過剰状態にあり、それでも今なお養成機関が増加している状況が理解できた。結果的に大学の一部は定員割れ状態にあり、薬剤師のレベルは急速に低下し、機能的に崩壊が危惧されているという。
薬剤師の養成状況を見ると、2003年4月に約20年振りに岡山県の就実大学と九州保健福祉大学の2校が薬学部を開設した。続く04度には日本薬科大学と千葉理科大学の2大学が新設、青森大学など既存の5大学が薬学部を増設した。以降、07年までに26大学が設立されている。
その結果、07年の薬学部の入学定員は71大学72学部で入学定員は13.274人(6年制12.010人、4年制1.264人)となっている。
厚生労働省は、2002年に薬剤師問題検討会が報告書をとりまとめた。それによれば、早ければ2006年にも需要は頭打ちとなり、2037年には薬剤師は36万人となるが、需要は23万で、13万人もの余剰が出ると予測した。その後、医薬分業の進展や6年制教育開始などを受け、若干事情が変わってきたようであるが、供給過剰状態が続くと結論つけた。にもかかわらず、本年、08年度には慶應義塾大薬学部が認可され、鈴鹿医療科学大学薬学部、立命館大学薬学部、千葉科学大学薬学部が認可申請中である。
これまで20年間もなかった薬学部の新設が一気に進んだ背景には、政府の規制緩和方針がある。学校教育法等の一部が改正され、大学や学部の設置認可が受けやすくなった影響が大きい。文科省は養成機関をコントロールすることは困難で、基準に達した申請は認可せざるを得ないとしているので、まずは厚労省が需給計画を立てて、国として養成計画を作成すべきである。
秋田県医療関係団体の今回の相互の情報提供によって、医師、歯科医師、薬剤師の養成問題には各々重大な問題があることが理解できた。ただ、秋田県の薬剤師の需要と供給状況、現状の問題点についての詳細は知ることは出来なかった。
歯科医師と薬剤師は養成過剰で、医師と看護師は明らかに養成数不足で四師会共に機能的に崩壊状況に向かっている、と言えよう。
この問題に関して、もっとも問われるべきは国、厚労省の医療の将来像に対するヴィジョンの欠如、場当たり的な対応である。
(9)看護師不足
熾烈な獲得競争
平成18年度の日本病院会の調査によると解答した666医療機関の喫緊の課題は(1)看護師の充足が72.2%、(2)医師の充足が71.5%(3)病床利用率の向上が49.4%・・と続いた。医師不足問題と同様に看護師不足が著しく、医療崩壊の一因となっている事が伺われる。
平成18年度診療報酬改定は医師不足・看護師不足の現状でのマイナス改定であり、「医療の崩壊スパイラル」に一層の拍車をかけた。看護師問題について言えば、「夜勤72時間問題」、「正看比率問題」、および「各病棟2名の有資格者当直問題」へ対応を迫られた。
最も深刻なのは「7:1入院基本料問題」で、医療・福祉の現場に多大な混乱を起こした。この、より厚い看護体制は一歩看護の理想に近づいた体制であるが、看護師の不足の状態では超高度医療機関に限定して施行されてしかるべきであった。しかしながら、「7:1入院基本料」は生き残りをかけた病院にとって魅力であり、結果的に理念なき看護師獲得競争の源となった。
平成18年度の適応病床が55,000床、平成19年度は187,000床と僅か一年で3倍に激増した。このために中小病院、診療所、更に福祉現場において看護師が引き抜かれ、補充が困難になるなどの多くの問題が生じた。そのために病床閉鎖を余儀なくされた医療機関も少なくないと聞く。
医師不足に対して厚労省は昨年「緊急医師派遣システム」を作った。わが国において看護力を安定的に維持するためには、
■養成数増加、
■離職防止対策、
■看護師の届け出制、
■復職再研修、
■院内保育所の整備、
等が求められるが、看護師不足に対してはこの間何一つ目に見える改善策は行っていない。
現在、免許を持ちながら働いていない潜在看護師が約55万人もいるとされるが、そのうちの10%の5万人が医療の現場に戻ってくれば当面の看護問題は解決することから政策として緊急に取り組んで欲しいものである。
本年度は昨年ほどの派手な看護師獲得の動きは目立たなかったが、秋田県の看護師養成機関を今春卒業する予定者への求人は従来の2倍に増加し、首都圏のみならず各県の代表的病院の募集があり、看護部長、病院長の訪問は頻回であったという。平成18年度の新卒看護師の県内定着率は、今のところ従来と大差は見られていないという。
しかし、秋田でも看護師不足は医療崩壊の重要な因子である事に変わりはない。
県内看護師の退職、就職状況
秋田県内の医療関係4団体、県医師会、県歯科医師会、県薬剤師会、県看護協会は年に一回懇談会を開催している。今年は各界の「崩壊」の現状について意見交換した。その際、県看護協会が配付した資料を眺めてみると県内の看護職種をめぐる事情の一部が見えてくる。資料は分かり難いがその中から適宜抽出した。
まず、年間に実に多数の看護師が退職・離職している実態に驚かされた。県内78病院における平成18年度看護職員の退職者調査は以下の如くという。
■18年度病院の退職者数は570名。
■退職者は、看護師408名(72%)、准看護師132名(23%)。
■退職看護師は20代が210名(38%)、50代が132名(23%)、40代は71名(12%)。
■退職理由は、他分野への興味93件(16%)、健康上の理由74人(13%)、結婚71名(12%)、その他であった。
■
その他として挙げられた理由:進学、他の施設に就職、大学教員に、所属部署の廃止、臨時採用の満期、死亡、夜勤業務が会わない、実家に帰る、人間関係、自分に合わない、自信喪失・・・
退職のピークは20歳代が最多だから、恐らくは結婚・妊娠・出産が主と思っていたが、意外と他の分野への興味が生じたための転職も多いのに驚いた。国家資格まで取ってもそれが生かされないのは残念な事でもある。
退職者がでれば当然補充することになるが、平成19年度に71病院に行った 医療従事者採用調べでは以下の状況を知ることが出来た。
■
求人は21職種で、929人と昨年度に比し231人の増加。
■
最多は看護師516人(57病院)で、准看護師74人(28病院)、看護助手57人(11病院)、介護福祉士49人(9病院)。
■
採用人数は看護師405人で昨年の321人より84人も増加。准看護師34人、看護助手39人。
■
私的病院では採用者総数中の看護師の占める割合は公立や公的病院に比し低い。採用された准看護師、看護助手は全て29の私立病院の採用。
■
今年度は看護師が111人不足した(公立5人、公的18人、私的88人)。准看護師40人、介護福祉士32人、看護助手と薬剤師の18人が不足した。
採用人数は看護師405人で昨年より84人も増加しているが、これは「7:1看護」及び「72時間以内2人体制夜勤」などの影響と考えられる。その煽りを私的病院がモロに受けている。いずれの職種においても私的病院の採用不足が目立った。私的病院は公立や公的医療機関ほど注目されないが、経済的にも、マンパワー確保の面でも厳しい運営を余儀なくされている。
病院で看護師を募集しても111人も不足しているのだから売り手市場である。その面でナースセンター登録者に注目してみる。秋田県ナースセンター登録者120名に対して行った調査は以下の結果であった、と言う。
■
未就業者の希望施設は、「診療所」15%「病院」11%。
■
雇用形態の希望は、「臨時」63%、「日勤のみ」が77%、「月-金」が70%以上。
病院勤務を望む看護師は少なく、ウイークデイ、日勤帯だけの臨時採用の希望者が多い。従って、現状のナースセンター登録者の希望と、病院の希望との間には大きな解離があり、センターからは殆ど看護師は紹介されない、と言う現実が読み取れる。
この調査結果からも秋田県の医療機関の状態、特に病院の看護師不足の現状が見て取れる。特に私的医療機関は厳しい状況にある事が分かる。
(10)「医者の不養生」
「女性医師問題」には共通点
「医者の不養生」と言う言葉は比較的よく知られている。「藪医者」と同様に医者をバカにする言葉の一つである。
医者自身は決してバカでもなく不養生ではない。過労とストレスから心身ともに疲弊し、健康不安を抱えながらも多忙のために対策をとる事も出来ず、耐えて仕事をしているだけである。体調が不良になっても、病気になっても、自分でこっそりと検査を受けて,自己診断して薬を選び、我慢してつらさをやり過ごしている。だから、「医者の不養生」等と言って医者をバカにしているとこれから病院に医師はいなくなり、医療は崩壊に向かう。
医師が時に入院してくる。結構病気が進んだ状態にある。カルテを調べると自分では結構いろいろ検査や服薬をしているが、第三者から見て多くは中途半端で、時に的がずれている。
医療崩壊の一因として「女性医師問題」がある。しかし、問題のルーツは女性医師にあるのではなく、妊娠中・子育て中の女性医師が医師の過酷な労務環境に入り込めないからである。だから、女性医師問題を解決するには医師の労務環境の改善が必須である。これと同じ論理で「医者の不養生」という言葉の持つ問題点に対して何も対策をしないと、これからは医療崩壊が進んでいくだろう。医師の気質も時代と共に変わっていくからである。
私は決して丈夫な方ではない。子供の時からひ弱であった。今も年に何回も何回も風邪をひく。毎日風邪の患者とつきあっているのだから半ば当然でもある。体調が悪くとも仕事に穴を開けられない。特に外来は休むと患者や同僚医師に大きな迷惑をかけることになる。医師になってから今まで、昨年夏に手術のために10日間ほど入院したが、この時を除くと医師になって約35年間、外来を休んだのは一回だけである。この日は40℃の発熱で出勤はしたもののダウンし、最小限の病棟業務だけこなし、外来は休ませて貰った。
医師は使命感があるから自ずから働き過ぎになりやすい。また、周囲はそれを当たり前の如くにとらえていた。日本の医療は医師の我慢と自己犠牲で何とか維持できてきたが、これからの時代はこのままであってはならない。ホントはもっと旱く勤務医が過酷な労務環境に抗議の声を挙げるべきだったのだ。
「医者の不養生」は業務環境の劣悪さに由来
「医者の不養生」のルーツは医療政策の拙さから
日経メディカルオンラインのアンケートの自由記述欄のには以下の様な意見が見られた(短く改変)。
◆
医師自身の健康管理やメンタルヘルスは重要視されていない
◆ 患者に指導していることを自分で実行できれば、どんなに良いか
◆
このままでは長生きできない
◆ あまりにしんどい。患者の方がよほど健康だ
◆ 自分はうつ病ではないかと思いながら生活している
◆
不調だが、他の医師に診られたくない
◆ 自分の病院だと、恥ずかしくて診てもらいにくい
◆ とにかく勤務時間が長く、生活が不規則になる。
◆
朝食はとるが、昼食は抜き、夕食は早くとも21時以降
◆
労働基準法を厳格に適用してほしい
厚労省はどう考えているのか、と言うことで編集部は厚労省医政局医事課課長補佐の井内努氏の意見も載せている。彼は、「男性若年層の医師に関しては確かに労働時間が長いというデータがあり、負担軽減の手立てを講じていきたい。ただ、医療従事者の健康管理は、基本的にはまずそれぞれの医療機関が考えるべきこと」と語っている。
同じようなことは前の柳澤厚労大臣も述べたと記憶するが、私は大臣や厚労省の職員がこんなことを言っているようでは医療崩壊はとどまらないと思う。
長年、低医療費政策を進め、医師養成数を制限してきた。しかも、時代の読みも拙かった。結果として医師不足と偏在、過酷な急性期医療の労務環境が生じてきた。この厳しいレベルをもたらしたのは医療政策の誤りであるうにもかかわらず、責任を認めようとせず、医療現場で対応せよという。こんなバカな、もう医療現場で対応できるレベルをとうに越えている。ここに至ってすらも、繰り出してくる医療政策はほぼ全て経済的視点からだけである。
もう、ここまで至ると医療崩壊は止められない。止めることが出来るのは、抜本的医療政策の改善だけである。
11.民間病院の崩壊
今回の診療報酬改訂も厳しい
平成20年度診療報酬改定が2月13日の中央社会保険医療協議会総会で決まった。産科・小児科などの病院勤務医の負担軽減策の他、年々運営が苦しくなっている民間病院への影響も気になる。今問題になっている医療崩壊は大規模公的病院、急性期病院中心の話題であるが、中小の私的病院は更厳しい運営を余儀なくされている。
日本病院会・民間病院部会長の加藤氏がこの点について病院会ニュースで解説しているので一部を紹介する。短縮するために適宜表現を変えた。
■改定の第一印象を端的に言えば民間病院にとって不十分、不本意。
■この改定では民間病院の崩壊はくい止められない。
■ 急性期大病院はある程度評価されたが、ケアミックスや療養病床主体の中小病院にとっては展望を持ち得ない厳しい改定。
■ 本体部分が0.38%プラスだが、改定全体では連続3回のマイナス改定で、累計7%余りのマイナスとなっている。
■ 勤務医への評価は不十分。勤務医に直接配分するべき。
■
診療所の時間外手当を高くすることで勤務医の負担を減らす発想は問題外。
■ 病院の再診料を低くするのは患者が増加するため逆効果。
■
200床以上の病院の外来診療料は高いと言われるが、検査が包括されており、診療所の再診料と意味は異なる。
■ 併科受診の再診料算定不可間題も残された。
■
指導料が、病院ではほとんど算定出来ない。
■ 入院基本料10対1がある程度評価されたが、看護師不足対策も不十分。
■ 民間病院の大部分は10対1が多いが、業務内容は7対1とほぼ同じなので、評価が必要。
■ 200床未満の病院の外来管理加算要件となった5分間診療のルールは実態に即していない。診療内容を時間で評価するのは必ずしも妥当とは言えない。
民間病院事情
病院は低い診療報酬のもと、人件費その他をぎりぎりまで削減し、常に自転車操業で運営している。にもかかわらず日本の病院の72.8%は収支で赤字を計上している(2006年病院運営実態調査)。このうち自治体病院の90.7%が、その他の公的病院の59.6%が、民間病院47.3%が赤字である。
自治体病院、公的病院には設立母体からの多額の補助金が回され、何とか経営が成り立っているが、各病院の累積赤字は巨額である。自治体病院、公的病院の経営には親方日の丸的甘さはないわけではないであろうが、これほどの、大部分の病院が赤字であることは、経営の努力の有無と関係なく、制度そのものが悪いことを示している。
国民の健康を維持している病院が倒産の危機に面しているのに、何が健全な医療行政、何が世界一の医療だと言うのか。WHOの評価は間違っている。
民間病院の経営はとても厳しい状況にある。補助金がなく大きな赤字を計上すると立ち行かなくなる。20年前の右肩上がりの好景気の時代には民間病院は9%前後の収益があり、増築や新築が相次いだ。10年前には収益が2%前後に、ここ数年は赤字続きとなっている。民間病院はこの10年間で約10%減少している。
民間病院は経営が成り立つことが存続の絶対条件である。そのため私共の病院もそうであるが、民間の大規模急性期病院のベッド稼働率は90%以上が目標となっている。先の2006年病院運営実態調査によれば、自治体病院のベット稼働率は76.2%、その他公的病院80.1%、民間病院81.9%となっている。
病院の利潤追求は禁止されている。禁止せずとも利潤が残ることなどあり得ない状況で、倒産しないために四苦八苦している。それでも民間病院は患者の立場を重視した医療を展開している。そのために評判の良い病院ほど、経営的には破綻寸前のところが多い。
民間病院は設立資金の出所が違うだけで、その役割は公的病院と何ら変わらない。医療は国によって統制化され、設立母体が何であれ公共の役割を担っている。にもかかわらず民間病院には補助金は無く、逆に企業として税金を取られている。
民間病院の経営が極めて苦しいが、今回の診療報酬改訂は更に追い打ちをかけた。
厚労省は民間病院を軽視をしている。日本の病院医療の80%以上を担っている民間病院の崩壊は日本の医療の崩壊を確実に加速する。
診療報酬改訂の評価
日本病院会・民間病院部会長の加藤氏の解説を続ける。短縮するために一部の表現を変えている。
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回復期リハビリテーション病棟の医師要件が専従から専任に緩和は評価。
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B・C型肝炎、HlV患者の手術時加算が増額になったことは安全管理面から評価。
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新設の医師事務作業補助体制加算を算定できるが、医師以外の指示の全てが業務対象外になったのは非現実的。業務を更に広めることが必要。
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地域連携クリティカルパスに脳卒中が追加されたことは評価。
■ 後期高齢者の主治医は診療所のみは不可解。中小病院の医師も含めるべき。
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妊産婦緊急搬送入院加算が新設されたが、ハイリスク妊婦の評価は困難。
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手術に投入したマンパワーの適正評価必要。材料、特にディスポ製品が手術に占める割合が大きいが、これらも適正に評価されるべき。
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日本も救急のトリアージと救急車を有料化しないと救急医療は崩壊する。
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一般病床が90万床から50万床へ減床されると言うが、その過程で民間病院はどうなるのか見えない。
上記の如く、項目毎には民間病院の立場からも評価すべき改訂は一部ながら認められた。しかし、最後の項目の如く医療供給体制の根幹の行く末が不透明なために疑問や不安がほとんど解消しない、というのが本音である。
何れにせよ、この2年間は民間病院にとって厳しい状況は変わらない。だから、地域医療の崩壊に歯止めがかからない。
医療崩壊の主因は低医療費政策であり、最早、現場の医師、医療機関にとって対策の手段は見つけ得ない状況にまで至っている。それが私の感想である。