新型インフルエンザ対策を進めていますか?

(秋田県医師会常任理事 福田 光之)

 
2007年1月頃宮崎県と岡山県で「鳥インフルエンザ」が発生し、H5N1ウイルスと言う強毒型ウイルスが原因だったため、鶏を一羽も残さず処分しました。「鳥インフルエンザウイルス」は原則的に人には感染しません。しかし、「ヒトインフルエンザウイルス」と「鳥インフルエンザウイルス」の双方の性質を併せ持つ「新型インフルエンザウイルス」が発生すれば、ヒトからヒトへ次々と感染し、大変なことになります。「新型インフルエンザ」はいつ出現するのか、正確に予測することは出来ませんが、専門家は既に時間の問題だ、としています。現代社会では、人ロの増加、都市への人口集中、航空機などの高速大量交通機関の発達などから、世界のどこで発生してもより短期間に地球全体にまん延すると考えられます。特に、日本は企業の海外進出も著しく、人的交流も盛んなため直ぐに影響が及ぶと考えられます。

 「新型インフルエンザ」に対してヒトは抵抗力を持っていないので、住民の約25%が感染すると推定されています。また、高率に肺炎を生じるため致死率もかなり高いと考えられます。大流行が起これば、8週間程続き。その間に秋田県内の感染者は約23万人、入院が必要な患者は5.000人、死亡者は1.600人にも達すると見込まれています。県内にある医療機関で対応できませんので、基本は在宅療養になります。重症者は小学校、地域の体育館、公民館等に仕立てた「にわか病院」で治療することになるでしょう。

 「新型インフルエンザ」が流行している8週の間、ヒトとヒトの接触は感染の危険が高いため、買い物を始めとし、外出、移動、集会は控えなければなりません。学校は当然休校になります。

 職場は感染の場になり得ます。業界を問わず、従業員の4人に一人の割合で感染して休業するほか、感染した家族の世話等でより多くの従業員が欠勤するでしょうし、何人か死亡するでしょう。だから、社会・経済への影響も相当のものとなります。食品や生活物資の流通も滞りがちになるなど、生活に大きな支障が出ます。

 従って、各企業の経営者は如何にして企業を維持していくか、今のうちから考えておく必要があります。

 県と県医師会は協力して大流行時の医療体制づくりに取り組んでいます。また、県民に対して、8週間ほど、家で流行が治まるのをじっと待つための準備、心の準備を始める様に広報を始めました。最小限、一ヶ月分ほどの食料品の備蓄は必要と考えます。

 この、SFまがいの、厳しい状況になり得る可能性が高いのに、社会はあまりにも平穏です。県民も各企業もまだ一切準備をしていないようです。

 厚労省から「新型インフルエンザ対応ガイドライン」が発表になっています。その中に「事業者・職場における対策ガイドライン」の章がありますので、各事業所のしかるべき立場の方は急ぎ入手して対策に入られるようお勧めします。ガイドラインは厚労省のホームページからダウンロード可能です。



(地域産業保険センター便り 2007.4月号巻頭言)

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