病院経営のあり方について
病院経営に株式会社の参入阻む理由はない、は誤った考え
8月24日付けの読売新聞の社説に、『政府の総合規制改革会議は医療への株式会社参入を提言しているが、これに対して医師会は猛反対している』との記述があった。
当然である.
株式会社が医療分野に参入するという事は企業が診療や医療を介して利潤を挙げる、すなわち儲けると言うことである。株式会社が患者のために、よりよい地域医療のため、と言うことを第一に考えて医療に参加してくるだろうか?医療分野はそんなに甘い世界ではない.
医師会はその倫理綱領にも「利潤を追求しない」と詠っており、方向性の異なる株式会社の参入によって「医療の公共性」や「医療の平等性」が維持されなくなると考えている。厚労省も方向性としてはこの点では一緒である。
医療はまず儲かるものではない。古き良き時代が無かったわけではないが、現在はほとんど全ての医療機関が青息吐息と言っていい状態である。医療制度改革による受診抑制によって医療収入の減少が著しい。その中で経営を維持していくのには徹底した経営管理が必要であるが、その底支えは医療人としての倫理観である。それが砦になっている.こういう状態の中で利潤を追求して行くには徹底した収入増への画策と経費の節約しかない。要するに過剰医療と質の低下が車の両輪の如くにもたらされる.それが病む患者を対象にもくろまれる事になるが、このような状況は考えるだけでおぞましい。
医療と並べて論じるにはあまりにもレベルが低く、例として引用する私にとっても不快であるが、倫理観の欠如した、あるいは希薄な企業倫理のレベルでは「日本ハム」、「雪印食品」に類する事象が必ず起こる。
『経済、社会のあらゆる制度が見直しを迫られる中で、医療だけが例外であり続けることはできない』とか、
『公共性と市場原理は両立し得ないものなのか、株式会社参入の長所と短所を冷静に見極めることが必要だ』、『適正な営利の追求まで全否定することはない』・・・との意見もある事は十分承知してる。
しかし医業に携わる身にとっては、これらの意見には100歩譲っても同調できない.
(2002年8月26日)