秋田県作業療法士会創立20周年記念式典挨拶

(秋田県医師会常任理事  福田 光之)
 



 本来であれば、寺田会長が出席してご祝辞を述べるところでありますが、本日は所用にて秋田を留守にするときいております。

 そのために常任理事の私が県医師会の代表として出席いたしました。
 恐縮でございますが、一言ご祝辞を申し上げます。

 まずは,作業療法士会が設立20周年を迎えられたことに対し、心からお祝い申し上げます。
 このような会に、また、お祝いの席にもお招きいただき、県医師会としてまことに光栄と考えており,改めてお礼申し上げます。

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 さて,設立10周年記念の際にはわずか49名、それが20周年の現在は223名と10年間の間に4倍もの会員数にまで至ったと聴いております。
 今日の隆盛の背景には、
長寿社会の到来、疾病構造の変化、国民生活水準の向上や意識の変化があり、かつ、国民の医療ニーズは高度化、多様化し、包括的、継続的医療の必要性が高まってきたことから、と思います。ともあれここに至るまでの先人の方々のご苦労はさぞかし大変なものだったと推察いたしております。

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 作業療法士をはじめとするリハビリテーション関連の皆様方の働きは,我々医師にとってとても大きな支えとなっております。

 私事を交えてお話しいたしますが,私は医師になってからこれまで30余年になります。当初の15年間は血液学・免疫学の分野で,次々に新しい知見を治療に応用し,白血病などの治療に当たり,化学療法では超え得なかった限界を骨髄移植を導入することで乗り切るなど,近代医療の恩恵を患者さんと共に分かち合ってまいりました。

 ここ15年ほどはその分野を後輩に譲り,子供の頃から夢の一つでありました高齢者医療の方に比重を移しておりますが,それと共に私はいま医師として患者さん方に一体何が出来ているのかと無力感に襲われております。

 我々が身につけた近代的な医療技術は,はたして高齢の患者さん方に本当に役立っているのか,局限すれば近代医療とは,ともすれば寝たきり患者製造業ではないのか,と自問自答することもあります。
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 要するに,我々医師は患者さんの病の治療という面ではいささかの役割は果たしているとは考えておりますが,それだけでは患者さん方を幸せにしてあげられないということです。個々の患者さんに全人的な治療を考えたときに,病気による障害,あるいは病気に随伴して二次的に生じてきた障害を,正しく評価して人間として,その人なりに生きていけるように,そこまで考えてあげなければ治療したと言うことになりません。
 その重要性に気づいたからと言っても,多くの医師にはそれ以上の治療は到底不可能であります。
 そのためには,リハビリ分野のスペシャリストであるみなさん方との連携は現代の医療にとっては必須のものと考えています。

 一方,残念ながら医師の間にすら作業療法士のみなさん方の技能が正当に知られているとは言えない状況で,そのために回復できる機会をみすみす棒に振ってしまっている患者さんを時々目の当たりにいたします。このことは非常に残念なことだと考えます。

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 私は日本医師会の医療関係者検討委員会のメンバーでもあります。この委員会では医師と医療関係者との連携のあり方等を検討する委員会ですが,本日この会に出席できたことを機会に作業療法士の皆様方と医師との有機的な連携についてより前向きに考えるきっかけにしていきたいと考えております。

 
 作業療法士の皆様が、今日の感慨を胸に、どうか今後もご活躍下さいますようお祈り申し上げます。
 今後のこの会のますますのご発展を祈念いたしまして、県医師会からのご祝辞に代えさせていただきます。
                          (2003/4/26)


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