医師会の主張

「混合診療」Q&A

今話題になっている「混合診療」って何ですか?

 日本の健康保険制度がまだ未発達の頃、患者さんの家族から、「保険の利かない薬を使ってでも何とか治して下さい!!」とよく言われたものです。当時は健康保険の利かない治療法も随分ありましたから、この様な切実な声が聞かれたのです。

 「混合診療」とは、解りやすく言えば、この様に「健康保険による医療」に「健康保険範囲外の自費負担部分」を上乗せして受ける医療のことを言うのです。



と言うことは、要するに「保険診療」はレベルが低いのですか?

 いいえ、そんなことはありません。日本の健康保険制度は今では十分に発達していて国民の医療に必要な部分は十分にカバー出来ています。
 そうは言っても保険診療の枠は決められていますので、この枠から外れる疾病をを持つ患者さん方からは「混合診療」の希望は常に出されています。この意見は常に傾聴し、解消していくように努めなければなりません。

 しかし、今話題となっている「混合診療」は医療を受ける患者さん方からの希望でなく、政府や経済界から出されている事実に注目していただきたいのです。
 彼らの言う「混合診療」の目的は良い医療の提供ではなく、自己負担分の医療を増やして医療費の国庫負担や企業の健康保険料の負担を軽減していくことの方に主たる目的があります。 
 だから「混合診療」を導入することは国民の医療費の負担を増やすことと同じと考えるべきなのです。



今は「混合診療」が認められていないのですか?

 認められていません。健康保険で診ることができる診療の内容及びその価格は厚生労働大臣が決めています。そして、もし「健康保険の範囲を超えた診療」が併せて行われた場合、その部分の診療費を患者さんに請求することを禁止しています。 もし、患者さんから費用を別途徴収するとすれば、その診療は全てが「自由診療」扱いとなり全額患者さんの負担となります。

 これは国民皆保険を発展させ、堅持するためのルールなのです。



差額ベッド費用などと同じ考え方で自費診療費部分を上乗せ出来るようにすれば、患者さんはより良い医療が受けられるのではありませんか?

 差額ベッド費用は、診療費ではありませんので「混合診療」論議とは全く別物と考えてください。

 患者さんの選択・納得による自費分診療の上乗せによる「混合診療」は、より理想に近い制度にみえるかもしれませんが、今議論されている「混合診療」には、いくつかの重大な問題が隠されています。

 政府や経済界人は、混合診療の導入によって、より一層良質で、高度の医療を提供出来る、と言っていますが、目的が医療費の削減ですから何れ保険の給付範囲を狭めて来るでしょう。今健康保険で診ている医療、例えば「感冒」「急性胃腸炎」などの、誰でも罹るような当たり前の病気を「保険外」とする考え方も真剣に論議されています。そうなると国民の大部分の方々が大きな影響を受けることになります。

 「混合診療」が導入された場合、保険外診療の費用は患者さんの自己負担となります。支払い能力の有無で受けられる医療のレベルに差が生じます。医療を受ける権利は憲法で平等に保証されている基本的人権です。「混合診療」の導入は、お金のあるなしで必要な医療が受けられなくなることにつながります。
 だから「混合診療」を導入することは国民の基本的人権の侵害とも言えるのです。



保険で認められていない薬が安全で有効なら、自費でも使用を認めるほうが患者さんにとってよいのではありませんか?

 安全で有効である薬、治療法ならば、健康保険で使えるようにすれば、すべての患者さんが平等にその恩恵を被ることができます。これが国民皆保険の基本的な理念です。
 だから「混合診療」を導入することはわが国の保険診療の理念を崩壊につながります。
 
 上記のような視点から、医師会では「混合診療」の導入に反対しているのです。




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