書評 -文芸書&一般新書 |
大逆転!―コンチネンタル航空-奇跡の復活 日経BP社
ゴードン・ベスーン (著), スコット・ヒューラー (著), 仁平 和夫
価格: ¥1,890 (税込)
私は航空関係の本が大好きである。新型航空機の紹介、ヒトや巨大なシステムの運用、安全対策、サービス、危機管理、緊急事態への対応、事故の際の原因究明過程、事後処理など、どの点を見ても興味津々たるものがある。特に羽田空港内の書店にはこの関係の書籍が沢山陳列されている。出張時の飛行機のなかで航空機事故や墜落等の書籍を読んでいることも希ではない。
航空関連の各種の対応、経営などは医療機関にとっても医療関係者にとっても共通点が少なくなく参考になることも多い。また、事故への緊急対応や事故の究明過程は診断困難な重症患者の分析、診断、治療の過程ともよく似ている、ということも私が好んで読む理由の一つでもある。
2ヶ月ほど前に横浜の娘の家を訪れた。婿殿は大変な読書家で引っ越しからそれほどたっていない新居の自室には広いジャンルの書籍が未整理のままうずたかく積まれていた。それを眺めているときに目に入ってきたのがこの本である。
手に取ってみると、内容的には航空機の話ではなく左前になっていた航空会社の経営の建て直しの話である。
米国のコンチネンタル航空と言えば超一流の航空会社として評価されているが、この本で実際には大変な会社であったことがよく理解出来た・・・と言うより驚いた、と言うのが感想で、この分厚い本をとりつかれたが如くに一気に読み切ってしまった。
この本は、コンチネンタル航空が、破産・倒産直前から見事に立ち直った戦略を記した本で、CEOの視点から記載されている。記述は第1部: 最低のエアラインからナンバー1企業へ。第2部: 成功へのフライト・プランの二部構成になっている。
著者の経営を立ち直すための事実のクールな分析過程、それを元に打ち出す数々の戦略について記載されているが、例えを交え記載されているなど、実に解りやすく、この種のジャンルの本の中ではとても読みやすい。戦略としては斬新なものはないものの共感できることも多く、考えさせられるものが多々あった。
著者は従業員との信頼関係がいかに大事であるか、を何度も何度も強調している。そして的確で分かりやすい戦略を打ち出し、一つ一つクリアする実績をしめしながら、働く意義や喜びを少しずつではあるが確実に与えていく。その過程が面白い。
コンチネンタル航空と言う巨大企業の知られざる内情を知るためにもとても参考になった。