ビルはなぜ建っているかなぜ壊れるか−現代人のための建築構造入門 文春新書
望月
重 (著)
価格: ¥700
日々当たり前にその中で暮し、働いているビルについて、私は建っている仕組み、構造について殆んど知らない。別に知らなくても良いのだろうが,恐怖感が根底にあるためにそうは言って居られない。巨大な会議場、ホテル、高層ビル・・・、人間の英知の集合で安全対策も十分、特に日本の建造物の安全性については折り紙付きとも言われているが、私には信用出来ないのだ。
本は、第1章:建物を「骨」まで知ろう、第2章:建物、それは重さとの戦い、第3章:構造材料さまざま、、第4章:なんでだろう?部材の力学……と続く。実に解りやすい親切な記述である。建造物はデザインへの配慮はさることながら,自重,風,地震,積雪等の多くの因子について検討が重ねられ,特に大きな地震のあとには建築基準が厳しくなってきている歴史もよく解った。
特に驚いたのは,巨大な建造物の場合,飛行機突入も想定しているとのことについての記述である。事実,あのエンパイア・ステート・ビルにも1945年7月に,B-25爆撃機が激突し,ビルを貫通したと言う。
ワールド・トレード・センター(WTC)に飛行機が衝突する可能性について、構造設計者も当然予想し、設計に考慮していたとされる。ただ,予想した飛行機は当時の花形旅客機のボーイング707で、その重量に119トン、時速290kmと着陸時の迷走時の事故を想定していたとのこと。2001年9月11日、午前8時48分北棟の96階から103階の間に、続いて午前9時6分、南棟の87階と93階の間に、それぞれボーイング767旅客機が激突した事は記憶からは消えることはないだろう。各種のデータから衝突した767の運動エネルギーは想定値の8-9倍はあったと推定されるが,それでもWTCは崩壊しなかったからその強度はすごいと言えるだろう。約1時間ご崩壊したが,その間約2万5,000人は安全に退去でき、結果的には2,800人の尊い人命が失われた。しかし,この崩壊は外力そのものではなく,飛行機に満載されていた燃料による火災が原因の熱崩壊と見なされている。