書評 -文芸書&一般新書

朝10時までに仕事は片づける-- モーニング・マネジメントのすすめ
高井 伸夫 (著)かんき出版 価格: ¥1,400
 同一著者による本「3分以内に話はまとめなさい--できる人と思われるため」私にとってはすごく役だったが、その本の帯に紹介されていたので取り寄せてみた。その動機は、著者に対してなんか自分と同じ事をしている人という親近感を抱いたこと、早起き生活を論理化してくれるのではないか、私にとってもっと工夫すべき事、取り入れるべき事も書かれているのではないか、と言う淡い期待であった。

 読んでみた印象は前著書ほどのインパクトはなかったと言うのが正直なところ。中身はやや薄い。朝早く起きれば時間が長く使えるからとても良い・・・と当然のことを書いていて、参考になる人もおられるであろうが、私には物足りない。ただ、時々いい話は述べられており、面白い部分もある。

 私の場合には日祭日も含めて朝8時半までにはその日の内にやっておかなければならないことを終えるようにしている。連日、9;00-14;00頃まではドックや外来関連の業務が固定して入っており、午後も入院患者さんへの処置、家族との面会等をはじめとして病院、医師会、県の関連の会議など、スケジュールも大抵は埋まっている。予定がない時には未処理の業務の消化のために割り振っている。しかし、その日の外来患者によって、午後から夜までずっとかかることもあるし、40人ほどの入院患者は高齢者が多いから状態も毎日毎日変化する。加えて、突然の来訪者や不測の事態も生じる事も少なくない。それらにフレキシブルに対応するため、午後は出来るだけ余裕を持たせなくてはならない。だから、起床時間は1;00-2;00頃とせざるを得ない。私にとってはこのような生活パターンしか選択肢がない中で暮らしている。自分の性格も含めて自分に合っているからストレスもない。本当のところ、これでも時間が足りない。しかし、もう削る部分など無い。

 著者は、朝10時までに一仕事終えるには、早朝出勤だけでなく、仕事の濃密化・スピード化が不可欠として著者は様々な工夫を凝らしてはいる。頭に浮かんだことは必ずメモにし、社員出社後、それを書面化させて配るとのこと。また、会議の代わりに「個別ミーティング」を活用し、5分程度で正確な状況把握と的確な指示をするという。朝型の生活を送りながらも、夜のつき合いは可能。失礼でない範囲の最小時間で切り上げるなど、夜型人間とつき合うコツも紹介する。

  ただ絶対に誤解してはならないのは、朝型人間がより優れているわけではないと言うこと。朝は遅いがやるべき事をきっちりとやっている人は大勢いるし、このパターンの方の人の方が遙かに多いのだ。要するに、朝方の人は生活のパターンが単に朝の方にシフトしているか否かだけのことで、人はみなそれぞれだから自分のパターンにあった方法を上手く利用して充実した時間が持てれば良いのだ。

 ・・・・と言うことで、自分のパターンが出来ている人には単なる読み物に、生活を変えようと模索している人には若干参考となる程度。大体こんな本を読んで早起きを実行するような人は3日坊主になることが多いだろう。やるべき人はこんな本読まなくたってしっかりと自分の生活パターンを確立しているのだ。