中通病院関係 |
地域と共に歩む中通総合病院
院長 福田光之
(1) 医療を取り巻く環境変化
総合病院という名は一般的に浸透していますので残されておりますが、総合病院と言う分類はありません。病院は担当する診療分野によって急性期と慢性期病院とに分けられ、中通総合病院は急性期病院です。
人口が高齢化し、疾病構造も変化しました。国は医療費某国論を背景に1980年代から医療費抑制策を続け、病床数を大幅に削減しようとしています。一方、病院は患者の在院日数の短縮、安全性の確保などが強く求められて、私ども医療関係者を取り巻く環境は、年々厳しさを増しております。
物価が右肩上がりに上昇する中、診療報酬は1994年以来、積算で12%も下げられました。2006年の調査では、我が国の1万ほどある病院のうち、何と72.8%が赤字を計上しています。国民の健康を守る病院の大多数が赤字となる医療政策は明らかに異常です。中でも自治体立病院は90.7%が赤字で、小泉首相の三位一体改革によって地方交付金が減額され、自治体立病院の存続は困難を極めています。
私共は県内で最も多くの病床数を持つ民間病院です。国の低医療費政策の影響は自治体立、公的病院以上の厳しさがありますが、私共は「医療の質」と「経営の質」の向上を2本の柱とした堅固な医療計画を策定し、法人内各施設、地域の医療機関との連携の下においてこの苦難を乗り越えてきました。
具体的には、がん医療や救急医療の分野の強化を図った他、2007年には7対1看護体制を取得し、看護の面でも大きく前進させました。また、業務の見直しとIT化により効率化と省力化を果たしました。
(2) 社会医療法人として一層地域に貢献します
中通総合病院は、創立以来50余年となります。創立以来病院の理念として「患者さんの立場に立った親切で良い医療を行い、他の医療機関と協力して地域医療に貢献する」を掲げています。更に、基本方針として(1)医療の質の向上、(2)納得と安心、安全な医療の提供、(3)病院の民主的運営と活性化(4)地域社会との連携(5)より良い医療・福祉制度の実現を挙げ、一貫した姿勢で医療を提供してきました。
このことについては多くの県民の方々、住民の方々からもお認め頂けることと自負しておりますし、患者さん方の笑顔は厳しい環境の中で働く私どもの心の支えです。
2007年の医療法改正で社会医療法人の制度が創設されました。私どもの法人は救急医療等確保事業のうち、救急医療の分野で中通総合病院の実績をまとめ認定を申請しました。審査はとても厳しいものでしたが、2月1日、県知事の認定を受け秋田県で初の社会医療法人になりました。この認定で病院の公益性が認められたことになります。今までよりも多方面の事業展開が可能になりますし、税制面でも優遇されます。私どもは従来から行ってきた地道な医療活動が公的に認められたことで、とても嬉しく感じると共に新たな責任を自覚しております。
(3) 地域と共に歩む中通総合病院
地域に密着した医療機関とは、市民・県民に「絶対に必要な病院」と評価される病院です。私共は安全で高度な医療の提供はもとより、地域の文化、生活に密着し、住民の多様化し、個別化する医療二一ズに応えていきます。
当院がこれまで同様に住民を医療面での砦として支え続けるためには現在地での病院の新築が最大の課題でした。一昨年春に長年の懸案であった隣接地を取得できたことで病院新築に向けて大きな一歩を踏み出すことができました。すでに新築準備委員会を発足させ検討に入っております。
(4) 医療改革への中通病院の取組み
厚生労働省は、現行のままでは国民医療費が伸び続け、現在34兆円の医療費は2025年には65兆円にも達すると試算しています。世界に冠たる国民皆保険を堅持し、医療制度を将来にわたり持続していくために、「診療報酬の抑制と患者負担増」だけでは効果が乏しい、としてさらなる改革を提起してきます。
国際的に見て、我が国では小規模の病院に人材や医療機器等が分散しすぎています。行政は必ず「病院の再編」を行ってきます。低医療費政策、病院の再編は双方共に住民、医療機関に対して一層厳しい環境をもたらします。この改革は私たちが求める医療と全く異なった方向ですが、病院は医療行政の変化に対応していくこと無しには運営できないことも真実です。
既に急性期病院では人口減少と高齢化を背景に平均在院日数の短縮に伴う病床稼働率の低下が生じており、いずれ病床の削減が必要となります。その結果、急性期の治療が終了した患者は速やかに回復期や亜急性期の病院や診療所に移すことになります。さいわい、法人内にはリハビリテーション病院をはじめ訪問看護ステーション、ヘルパーステーション等を担う施設があります。私共の法人は中通総合病院を中心に「医療と福祉の総合ネットワーク機能」を充実・発展させ、地域医療に貢献して行きます。
今後、急性期病院は全てDPC(診断群分類包括評価)の対象病院になると考えられます。DPCは医療の標準化や医療内容の評価のための指標を提供する有用なツールです。私共の病院も4月からDPC対象病院になるよう準備を進めています。今後の病院再編の時代に残れる急性期病院は、最終的には患者が求めるレベルの医療を提供し続ける病院、と考えられます。私共はどのような時代になろうとも、掲げる理念に即した安全で良い医療を提供し続けます。
終わりに
日本の経済が順調になりつつあった時期から医療界は実に厳しい状況を迎えていました。一昨年夏からの原油と穀物の資源価格高騰による生活不安、昨年春からの後期高齢者医療制度の実施等を背景に、患者さん方の受診抑制が生じています。更に、昨秋からの世界同時不況は秋田の経済にも深刻な状況をもたらしてきております。この影響が今後の医療界にどのように影を落としてくるのか、その影響は未だ十分計り知れません。
秋田は農業県であり、高齢化県でもあります。日本は内需拡大の必要があります。内需拡大のための投資の対象として、食料自給率の向上と医療福祉の面は注目に値する分野だと思います。
私は地域医療を預かる医療機関の長として医療・福祉がかかえる問題点を医師会等を通じて中央に発信していきたいと考えています。
(財団法人秋田経済研究所発行 あきた経済 2009年3月号)
病 院 概 要 |
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1. 病院名 社会医療法人明和会中通総合病院 |
7. 職員数 773人 |
2. 代表者名 院長 福田光之 |
8. 診療科 内科、消化器科他全23科 |
3. 所在地 〒010-8577 秋田市中通みその町3-15 |
9. 当院の所属する社会医療法人明和会は、当院の他、220床のリハビリ専門病院、5ヶ所の訪問看護ステーション、2ヶ所の健診施設などを有し、予防から治療、リハビリ、在宅医療まで、包括的な医療を追及しております。 |
4. 電話番号 018-833-1122(代) |
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5. 開設年月日 昭和43年10月21日 |
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6. 病床数 539床 (一般病床491床 療養病床48床) |