研修医諸君へ(10) 患者を受け持ったら外来主治医に連絡しよう
大きな病院に何故患者が集中するのか、何故大病院志向があるのかは、患者が総合病院的な連携治療が受けられることを期待しているからである。勿論、初診・再診料が診療所より安いこと、一カ所で複数科で診てもらえるなどの利便性、家が近いから、もその一つである事は否定できない。
一般的に大病院といわれるものは多くの診療科があって、大抵は「総合病院」と言う名称である。「総合病院」は、かつては規定があってそれを満たしていないと名乗れなかったが今は法律上の正式な名称ではない。ただ一般の方々に浸透しているし、ある種の良いイメージを抱けるから慣習上何処の病院でも残しているだけである。
多くの患者は求めているのは院内の診療科や医師同士の濃厚な連携による「総合病院的医療」である。だから、入院した時に例え卒後間もなくの医師に受け持たれたとしても、本音は別でもそんなに文句は言わない。連携が取れていると疑っていないから。もし、研修医だけしかいない医療機関があったら果たして患者は来るだろうか?否、殆ど来ないだろう。
総合病院に勤務する医師は自分は総合病院の医療スタッフの一員である旨の自覚と行動が必要である。
しかし、院内連携の内情はどうであろうか?多くの総合病院では、われわれの病院も含めて実際には患者が思っているほど、期待しているほどにはなされていない・・・と私は思っている。医師は必ずしも協調性は豊かでないし、患者がより良い医療を求めても他の医師に相談を持ちかけることも少ない。狭い自己の了見から患者を治療し自己満足の世界である。実に情けない現状である。こんな医師は本来病院医師としてそぐわない。
院内の連携が欠けていることを示す卑近な例を出すと、普段私が担当する外来(私の外来ではない)で私が中心になって診ている高齢の患者のうち約10名ほど現在各科の病棟に入院している。このうちで現主治医から私に連絡が来た例は一人もいない。何故私が患者が入院しているのに気づくかというと、予約診療の日に受診しないこと、外来カルテが上がってこないことから解るし、気になる患者はカルテを時折出して経過を追っているからであり、朝の回診時に病棟をまわ回っている時に患者や家族から声がかかるからである。
患者達は外来で診てくれている医師が入院後も大なり小なり関わってくれていることを期待しているから、私は予想外に入院していた患者に会ってもそ入院時から知っていたような振りをしてその場をそれなりに取り繕って急いで入院カルテを調べ、納得する。同時に、院内連携の欠けた病院の医師であることを気恥ずかしく思う。その後は時折病床を訪れて声をかけている。
研修医諸君には是非院内連携の意義を知って貰いたい。決して悪しき先輩医師を見てそれが標準だと思わないで欲しい。
次回は:周りには自分より優れた医師がいる