中通総合病院職員の皆様に    --病棟再編についての考え方-- 

2006/2/6  中通総合病院 院長 福田光之

1 はじめに
 全職員の皆様に対し、日頃の業務遂行を心から感謝申し上げます。

 さて、「新年の挨拶および所信」に記載した如く、今年度および今後は従来に比して一層厳しい医療情勢になることが危惧されます。この厳しい状況は全医療機関に平等に降りかかって来ますが、私どもは私的医療機関であり、対応を急ぐことが必要です。
 昨年、中通総合病院の新築を展望した中期計画を策定しました。展開すべき医療内容と安定した経営基盤を築くための方策について記載しています。今年度は病棟再編、救急医療、がん患者の治療、外来の整備、オーダリングシステム導入を重点項目に掲げ順次実施していく予定です。
 私は今年を、私たち自身がどの様に意識を変革していくことが出来るか、私たち自身が病院をどう変えていけるのか、それが問われている年と位置づけています。創立51年目という当院の新しい門出に相応しい年にしたいと考えます。

 全職員のご理解、ご協力をお願いいたします。

2 当院をめぐる情勢、最近の実績について
 ここ数年間、景気の低迷、少子高齢化を理由に診療報酬は極めて低く抑えられて、4年前にはマイナス改訂が行われました。医療機関の経営は余裕を失い、マンパワー、設備投資は最小限に抑えられた状況で運営されております。

 私どもの病院もここ数年間、医療収入は減少し続けております。一方で人件費を初めとする支出は増加し続けています。法人として大きな赤字を出さないで済んでいるのはリハビリテーション病院他の院所に助けられている結果です。

 収入減の原因は外来患者数の減少と、病棟収入の伸び悩みにつきます。
 外来患者の減少は病院周辺の医療供給体制が整備されたこと、処方の長期化による受診頻度の減少がその原因の大部分を占めます。

 病棟収入の伸び悩みは、在院日数の短縮化による病床利用率の低下、新規入院患者数の伸び悩み、入院長期化傾向と患者回転の低迷、単価の低迷によります。その背景要因として各診療科の病床配置数等の構造的な問題点、職員の多忙さ、職員の意識変革・コスト意識の欠如などが挙げられます。

3 従来の対策とその評価
 勿論、この間、私どもも医療情勢の変化を無為に受け入れてきたわけではありません。

 急性期病院を選択し、プロジェクト21で在院日数短縮の方法論を確立し、一般病棟の活性化を目的に療養病棟を導入ました。また、亜急性期病床も導入しました。その他、地域医療連携部を立ち上げ、予約床の見直し、専任のBCMを配置するなど機能向上のためにいろいろな対策をしてきました。しかし、その成果は一定程度認められたものの、当院の新築をも展望した将来構想の実現のためには十分ではありません。
 各分野の運用を徹底することで更に改善が期待できる部分もあるでしょう。しかし、現状のままの病棟運営では何れ限界を迎えます。

4 「改善」から「改革」へ 病棟再編の意義
 これからの医療情勢の中で当院が発展し続けるためには、これまでの医療を漫然と継続していくのではなく、我々自身の意識改革と病院の構造改革を進めながら、安全で満足感が得られる医療を展開していく必要があります。しかも、その改革は急がねばなりません。
 まず、3月1日に病棟の再編を行います。その方向は、全部門を挙げて急性期病院としての機能性を高めていくことです。病棟再編によって各診療科の患者の分散を出来るだけ少なくし、病棟の効率性・専門性を高めます。
    それだけでは目的は達成出来ませんので、同時に病棟の運営についても大幅な改善をはかり、診療部長の責任で確実に運用することにより、医療の安全性を高め、収入を増加させます。

 具体的には各病棟の診療科を1?3科に固定し、患者の分散を防ぎ、専門性を発揮した医療を展開すること、さらに、各病棟毎に、あるいは各診療科毎に病床稼働率、在院日数、日当点を設定し効率的運用を図ります。

5 更なる病診連携強化と救急診療の拡充
 しかし、在院日数の短縮は機能的増床と業務の増加をもたらします。そのため、入院患者の確保と業務の軽減対策が必要になります。
 当院は急性期病院を選択しましたが、外来では多数の慢性疾患の管理が行われております。これは当院の特徴の一つとなっており、早急な方向転換は困難です。一方、先に述べた如く外来患者数は減少傾向にあり、外来から発生する入院患者数だけでは当院の病床の運用は出来ません。
 従って、入院の閾値を下げること、当院の医療や専門分野の積極的な広報、病診連携の強化などで紹介患者、紹介入院を増やすなどの対策を強化していくことが必要です。

 当院の運営上必須なのは救急診療分野の拡充です。今回病棟再編と同時には対応できませんが、当院の将来を左右する部門ととらえ、改革を図って行くべき分野です。
 当面は救急診療を積極的に利用した病棟運営を図り、患者を積極的に入院させます。軽症な患者は救急観察入院病床に、病態から当該科が明らかな患者、専門的治療を必要とする患者は当該病棟かICUに入院させます。

6 診療機能および病棟運営の強化
 病棟再編は病棟運営機能の強化無しには成り立ちません。各病棟は診療部長、看護師長の責任で運営します。各診療部には原則的に一名の診療部長を配置します。患者を分散させないために病棟単位で病床管理を厳重に行います。

 救急入院患者を滞りなく受け入れるために、各病棟およびICUには常時、最低1床の空床を確保してもらいます。また、予備ベットも活用します。このことは困難を伴うことでもありますが、当院の将来展望のためには絶対に欠くことの出来ない重要事項です。
 社会資源、特に法人内、関連法人の社会資源の有効利用についても方策を追求します。

7 業務の軽減対策
 
看護師が看護に専念できる時間を確保するため、業務を徹底的に見直す必要があります。その他、医師の業務の平均化、オーダリングシステムの導入、病棟および外来の検査・処置部門を設置、介護福祉士・看護助手の採用、薬剤師や事務部門の病棟配置などの対策が必要で、早急に検討を始めます。

8 職員の意識改革とコスト意識の高揚
 この病棟再編にあたって、経営面のみを重視しているとの印象を抱いた職員は少なくないと思います。
 しかし、今、中通総合病院とって第一に重要なことは、医療機関としての経営基盤を確立することです。経営を盤石にする目的は利潤の追求ではありません。われわれ従業員の生活を守り、働く意欲と喜びを高め、組織の機能を維持し、良い医療を継続的・発展的に展開し、社会的使命を果たするためであって、それ以外の目的は一切ありません。

 全職員の方々の意識改革を望みます。安全で良い医療を提供したいからコスト意識の高揚が必要なのです。如何に素晴らしい理念があり、夢があってもそれだけでは存続できません。中通総合病院は地域の財産でもあり、私たち働く職員の財産でもあります。運営を大事にし、改革し、医療人としての夢も追求する場にしたいと思います。

9 病棟再編各論
 

10 おわりに
 今なぜ病棟再編が必要なのか、何故この困難な時期に再編を急がなければならないのか等について院長としての考えを提示しながら説明しました。今回の病棟再編は誰のためでもなく、自分たちのためであります。また、始まりであって終了ではありません。定期的に見直しをしつつ更に改善を図っていきます。

 全職員のご協力をお願いいたします。

 本稿に全分野の詳細までは網羅できませんでした。今後、必要な情報は「ニュース」を通じて提供していきたいと考えます。

 (本校は全職員への配付資料の一部です。HP掲載にあたり診療報酬改訂の推移、診療実績に関する資料、病棟再編の各論は省略しました)

   

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