中通総合病院職員の皆様に --年頭のご挨拶と所信--(2009.1.6) |
1 はじめに |
1 はじめに
新年明けましておめでとうございます。
2009年初の医局会を迎えるにあたり、新年のご挨拶と今年の所信を申し上げます。
いま、世界と我が国は政治や経済面で激動しています。その影響は医療面に及び医療機関と患者・利用者にとっては厳しい環境が続きました。
そう言う中。昨年度は皆様方には大変奮闘して頂きました。心から感謝申し上げます。
本年は今まで以上に先が読みがたい厳しい状況下にありますが、今年一年、よろしくお願いいたします。
2 2008年をキーワード的に振り返る。
医療・福祉は社会や経済の動き等に敏感に影響を受けます。昨年一年の動きを追ってみます。
●原油や穀物が投機対象となり、価格が高騰し、経済活動、国民生活を直撃(通年)。
● 中国製餃子に毒物。食の不安で年明け(1月)
● 揮発油税、日銀総裁人事で国会空転(3月)。
● 中国四川大地震、ミャンマーサイクロン大災害(5月)。
● 秋葉原で無差別殺人。宮城内陸地震(6月)。
● 地球環境と経済安定をテーマに洞爺湖サミット(7月)。
● 北京オリンピック。ロシアとグルジア間で大規模な武力衝突(8月)。
● 麻生政権発足。米国発の金融危機。遠藤氏ラスカー賞(9月)。
● 4人の日本人がノーベル賞を受賞(10月)。
● オパマ氏次期大統頷に。ムンバイでテロ。元厚生次官殺傷事件(11月)。
● 株価大暴落、円高で企業も業績悪化、企業倒産、失業者増。最大規模、大盤振る舞いの09年度国家予算が閣議決定(12月)。
2 2008年の医療界を振り返る。
地域医療の医療崩壊は更に深刻になっていますが、昨年一年の医療界の動き追ってみますと国の方針が変わりつつあります。
● 社会保障費2.200億円の削減撤廃論議(通年)。
● 医療事故調問題、厚労省第三次試案提示されるも結論出ず(通年)。
● コンビニ受診、クレーマー、勤務医激務問題(通年)。
● 参加型病診連携、柏原病院小児科母の会などの動き(通年)。
● 医師不足、地方交付税減で公立病院を中心に閉鎖、診療縮小が続く(通年)。
● 産科医不足で分娩を中止する医療機関が相次ぐ(通年)。
● 後期高齢者制度、特定健診スタート(4月)
● 生活保護受給患者には後発品を(4月)。
● 血糖測定用採血器具使い回し問題(5月)。
● 医師抑制策を転換、医学部定員増に(6月)。
● 全国医師連盟発足(6月)。
● 大野病院事件で担当医が無罪に(8月)。
● 医療関係者にプレパンデミックワクチン接種開始(8月)。
● 臨床研修制度の見直し着手(9月)。
● 秋田大学に総合地域医療推進講座開設(10月)。
● 東京都で8病院が受け入れ困難(10月)。
● 杏林大割り箸事件も無罪(11月)。
● 麻生総理の医師は社会常識に欠けるなどの非常識発言(11月)。
● 来年度予算で社会保障費2.200億円の削減は継続、堅持から維持に変更。実質230億円となる(12月)。
3 中通総合病院・法人の活動を振り返る。
上記の如く、私共は厳しい状況に置かれました。この様な中で中通総合病院・法人共にこの一年間はいろいろな施策を実行しました。その活動を簡単に振り返ります。
● 前年度から「第二次外来再編検討委員会」、「中通総合病院新築準備委員会」。
● 4月研修医4名 臨床工学部発足 麻酔科を中心にスタッフの退職問題救急受け入れ調整 中通病院「第二次中期計画策定」
● 5月名誉院長死去。
● 6月消化器科統括科長の退職。その後統括科長空席。
● 7月DPCデータ送付。退院支援業務の検討
● 8月病床利用率低迷。小児外科科長急逝。
● 「がん相談支援センター」を新設
● 9月病床利用率向上プロジェクト発足 法人「第二次中期計画を策定」
● 10月大曲中通病院新病院で診療
● 11月ウイルス性腸炎急増。
● 12月には内科系中堅医師病欠。
4 2008年を病院運営の面から振り返る。
2002年から当院の外来患者数、病床利用率共に減少しております。昨年も外来の患者減は続きました。入院医診療では7月以降、病床利用率が著しく低下があり、厳しい運営を強いられております。
原因として秋田県ではショートステイが計画では1300床程度であるのに対し約2000床と著増したことも一因と考えられ、外来新患数の減、特に新患数の落ち込みが原因と考えられます。新患が当院に受診し難いとの意見も聞かれますので、対策が必要です。
秋以降は入退院調整をしていただき、病床利用率は向上しましたが、予算二は届かず、かつ、単価が低迷し、厳しい状況にあります。本年はこの点を中心に対応をしていきます。
5 医療に展望はないのか
この四半世紀、国は低医療費政策を展開し、診療報酬はこの12年間で6.7%も下げたほか、在院日数短縮化、療養病床削減、患者窓口負担増、後期高齢者医療制度新設等の厳しい施策を繰り出しています。
医療機関は各々、急性期化、在院日数短縮、病床稼働率上昇、人件費削減等を実行し必死に対応していますが、受診抑制もあり、診療収入は伸び悩んでおります。
昨年の小泉首相退陣の後、安倍、福田首相の下で医療行政に雪解けの兆しが見え始めたこと、マスコミの論調が変わったことを申し上げましたが、その動きは秋口に向けて一層進みました。
しかし、昨年秋に「100年に一度」「全治3年のダメージ」と称されるほどの世界的な金融危機が発生し、経済は大混乱しています。G20を中心に修復が行われることが期待され、1929年の世界大恐慌の時とは時代が異なります。
恐らく経済の修復に数年はかかると考えられます。世界同時不況であることから貿易で経済を賦活することは困難で、内需の高揚をメインにせざるを得ない状況です。かつては内需拡大というと公共工事を通じて行われましたが、今後はその視点が医療や福祉に向かうことは十分に期待できます。そういうことから私は今後の医療、福祉は大幅に改善することが期待できると考えます。
6法人と病院の本年度の方針
昨年4月に中通総合病院の、9月に法人の第二次中期計画が出来ました。今年はそれの着実な実行を第一の目標とします。
法人の基本理念
●「いつでも、どこでも、だれでも」「患者さんの立場に立つ親切で信頼される高いレベルの良い医療を行い、地域医療に貢献していく」。
5点の基本方針
● 質の高い医療を総合的に提供
● 医療、介護、福祉の総合ネットワークの構築
● 地域社会との信頼関係の確立
● 人材環境の整備
● 経営基盤の強化
◎社会医療法人への移行
中通病院の基本方針
● 医療の質の向上と医療内容の充実質
● 納得と安心、安全な医療の提供
● 組織の活性化、業務改善に取り組む
● 地域社会との連携を深める
● 経営改善に取り組み経営の盤石化を進める
◎DPC対象病院へ参入
終わりに
私たちは医療活動を通じ市民・県民の健康を守ることで、社会に大きく貢献していますが、業務環境は年ごとに厳しさを増し、個々人の限度を超えつつあります。この様な状況下では働くモチベーションが低下しやすくなります。いま問題になっている医療崩壊の最も重要な因子は病院、とりわけ急性期医療を扱う病院職員、特に医師・看護師の過重労働と達成感の欠如に因るモチベーションの低下が原因になっています。その面では当院の職員は厳しい環境の中で良く頑張っていると思っております。心から感謝の意をお伝えしたいと思います。
私どもの病院内にもまだまだ解決すべき問題点はあります。今後は内憂外患を排除しながら、より働きやすい職場に作り替えていかなければなりません。それには過重労働のからの回避も一つの目標となります。
新年の挨拶を終わるにあたって、キーワード「挨拶」「笑顔」「ディスカッション」をもう一度ここで強調しておきます。この三つは人間関係の基本です。これを欠くことは困難を解決する糸口を閉ざすことでもあります。
平成20年を希望に満ちた明るい年にするよう、種々の提起と、院長としての考えを述べ、全職員のみなさん方のご協力をお願いし、年頭のご挨拶とさせていただきました。
実際には触れなかった分野にも問題は山積みしております。それらについてはまた機会を改めてお話し致したいと思います。
(1月8日の医局会の内容に若干加筆したが最終部分は未完成)
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