中通病院医報、31(4):273、1990
巻頭言 医報を読んで思うこと一病診連携
診療科間連携の立場から
福田 光之
医報を読んでかねてから不思議に思っていたことを2つ述べてみる。
第一に、医報に掲載されている症例の多くは文面から開業の先生方からの紹介患者であることがわかる。しかし、紹介医が共同執筆者として名を連ねていることはまずなく、文末に謝辞位はあるだろう、と思ってみても矢張りない。一方、時には複数の診療科による入院精査を経て方針が定まった患者、特定の医師が長期間外来で責任をもって治療し続けてきた例も掲載されるが、この場合にも元の主治医が共同執筆者に入れられていることは稀である。これは私の感覚では理解し難いことである。学会発表、学会誌なら種々の制約もあるが医報では制約などないので、執筆者の感覚に大事な何かが欠落しているためと思いたくなる。
私は常々病診連携や診療科間連携の重要さについて強調し続けているつもりであるが、その立場からも残念に思う。医療は自分一人の狭いr見からの判断のみで出来るものではなく、そのような医療は患者への冒涜でもある。従って、診療上、医師同志のタイアップ、医師とパラメディカルの間の情報交換や協力関係は重要で欠くことは出来ない。この点に関して中通病院でも医療姿勢として従来から病診連携を重視してきた、と文章上ではしつこく強調し続けている。医療のあり方委員会も"紹介された先生方には返事を欠かさないように"という、医師としての常識を単に文章にしたにすぎない様な答申までしている。しかしながら、カルテに添付してある紹介医への返事を見ると、来院報告のみであったり、通り一辺の事務的内容で、患者の病態、治療、経過などにまで言及しているものは少ない。
結論を急ぐと、医報に投稿の際には紹介医、他科や外来主治医をも共同執筆に入れるか、文末で謝辞に入れるべきであり、関係された先生方への謝意の表明になると思う。もちろん、先生方に医報お送りすることは言うまでもなく、紹介患者に関する整った総括として必ずや満足して頂けると思われる。病診連携は言うだけでは決して実を結ばない。あらゆる機会を有効に活用するべきである。
もう一つの疑問点は医報が院内の他職種員に全く読まれていないということである。その原因は、本誌が現在の医局員と.かつて当院で働いたことのある先生方を中心に配付され、明和会の各職場には殆ど配付されていないからである。もともと本誌の性格は院内誌と考えられる。従って、当院の医療活動の記録誌、情報誌としてまず全職員が共有すべきものであろう。現在の配付の範囲のみでは本末転倒である。
早急に改善して頂きたいと思う。